住めば都

 家を探すよりも先に自転車を買った。家がなければ止めるところがないだろうと、店で預かってくれることになった。いつでも好きな時に乗りにきたらいい、と。四角いマンホールが雪用であることを教えてくれたのはこの店主だった。背が低くて頬が赤く、チャルメルおじさんみたいな方。

 間もなく家が決まり店を覗くこともなかったのだけど、車輪のパンクという口実ができたので近くの自転車屋には寄らずにチャルメルのおじさんのところまで訪ねてみることにした。それほど距離はないのだけど、石狩川を越えるか否かの差は大きい。閉鎖的で長い橋のせいだと思う。

 今日はタイヤの修理をしながら、護国神社の夏祭りは必ず雨が降ること、お盆を過ぎれば秋になること、冬は大きな氷柱が出来るので軒下を歩けないこと、路上に何重もの氷の層が出来ること、春になれば氷ををつるで割って四角いマンホールに居れること、を教えてもらった。最後に「来ないから心配していたんだよ」という言葉を頂いて、店を後にする。

 そういえば初めて「住めば都」という言葉を聞いたのもチャルメルおじさんの口からだった。それから今日に至るまで20回以上聞くことになるのだ。「旭川は冬は厳しいけど、住めば都だよ」、誰もが言う。その度、これほど冬の厳しさを表す言葉はないと苦笑いしていたけれど、次第にそこには他の地域と旭川を比較する第三者的な眼差しがあることに気がつく。メディアの眼差しだろうか。もしかすると内地から移住してきた人たちがよく使っていたのかもしれない。「住めば都」そう口にする人に出会うたびに、わたしにはその人が長い長い旅をしてきたように見えるのだ。


(((後記)))チャルメ「ラ」おじさん、の誤りでした。Nさんより暖かいご指摘がありました。ありがとう。
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