hightlight

昨日のできごとはまたどこかでゆっくり書き留めておかなければならないと思うのだけれども、出張を終えて旭川に戻る最終列車の中で17歳の女の子に出会った。隣の席で、あーシアワセ!とつぶやいた彼女に、どうして?と聞いたことが始まりだった。紫のミニワンピに黒いマニュキュアをした彼女は、大好きなアーティストのライブに行ってきたこと、その人に名前を覚えてもらったことなどを話してくれた。全身あざだらけです!と指さした真っ青になった膝小僧からさっするにビジュアル系のライブなのだろう。ヘッドバンキングもするの?と聞くと、そうそうと笑った。ふと、金曜日に、久しぶりに会った友人たちと「今の高校生はどういう音楽をやっているのか」という話題でずいぶん盛り上がったことを思い出した。「かたくなにXJapanをやっているバンドとかあるのかな?」などと話して、ずいぶん笑ったのだった。すると案の定彼女自身もバンドをやっていて「います、います!2コ上の先輩がXやってましたもん。(セックス)マシンガンズもコピーしてました。ミカンミカンミカン~て。」「私?私はジュディマリ・レベッカ・東京事変のコピーとか!」
そうそう、私はちょうどこの出張で大好きな人たちに再会し、『月に負け犬』を口ずさみながらモノレールに乗ってかえってきたのだった。「好きな人やものが多すぎて見放されてしまいそうだ~」というあのくだりを。なのでつい「椎名林檎は歌詞も良いよねー」としみじみしてしまう。彼女は「林檎ちゃんは神ですよ。ベンジーに殴って欲しいって気持ち超わかりますもん!!」と言った。「うん、グレッチでね!」
それから、彼女の住んでいる小さな港町のこと、学校のこと、家族の話などを聞いた。壮絶だったけれど、こっちに来てからそういう人にほんとうによく会う。今旭川で私が心を開いている人たちも同じような背景を抱えている。卒業を間近にした彼女は、「お金があって札幌に行ける人はどうぞいってきてって感じ」と言い放った。閉鎖的で同調圧力の強い環境になじめず、しかしそんな街から出れずに自死する人も居るくらい事態は深刻であることを知った。「なーんて17歳のぺーぺーが何わかった口きいてんだって感じですよね」と彼女ははにかんだけれど、もうすぐ26歳になろうとしている私が理解し始めていることを、彼女は感じ、思考しているのだった。優しい人だった。
もうすぐ最終駅に到着する音楽が鳴ってから、本の話題になった。やはり読書家であった。「おかげさまで、国語の点数だけはいいんです」と言った彼女に、私はとっさに数冊もっていた本の中から庄野頼子の『200回忌』を抜き取り手渡した。彼女はびっくりした顔をして本を抱きしめて目を閉じた。
「こんなに隣の席の人と話したのはじめて」「もう今後ないだろうね」と爆笑しながら別れた。
今回の東京は慌ただしかったのだけど、大事な人たちとゆっくり話をする機会があって、「都市を滅ぼせ」の話だったり、地方は疲弊しているという話だったり、表現に付随する実感についてだったりけっこう今後に影響するような話が出来て、それらはすべて最終汽車でたまたま偶然隣にすわった彼女の未来に濃縮されているような気がした。おもしろくなるよ、大丈夫。





a0028444_939356.jpg

[PR]