人気ブログランキング | 話題のタグを見る

私の気違い部落

かれこれ2週間も雨が降り続いている。こんなことは滅多にないという。たしかに昨年は「何これ東京よりよっぽど日差しが強いじゃねえか!」と眩暈する日々だった。この夏は長そでが欠かせない。このまま秋に突入していくのだろうか。野菜と米と甲子園球児が泣いている。しかし先々週に来た幼馴染の意思を引き続き「生活」を実践中の私にはこれくらいの気候がちょうどよい。何事もほどほどで良いと思わせてくれる。

きだみのるの『気違い部落周遊紀行』を読んだ。きだみのるは、終戦前夜はまだしも戦後になっても日本から出られない!と途方にくれつつも、住まいに選んだ「気違い部落」でそこに住まう英雄たち(登場人物はみな英雄○○サンと書かれる)とのやり取りをメモしまくって本にした。なんとも愉快な会話の描写と、明晰な分析が交差する。

「東京から一時間半、次いでバス四十分、それから徒歩十五分の位置にある」この「気違い村」に私はまた別の登場人物を思い起こす。それはヘルパーとして働きながら詩を書く女性であり、雨という文字を多様に書き連ねる水彩画家のおじさんであり、また夕暮れになると「おら雨間の部落に帰るよ」と玄関に座るおばあさんである。

そういえば詩人の彼女は「こっちではお寺の掃除当番なんかもあってね」と言っていた。もしかするとそれは、きだみのるの住んでいた寺のことかもしれない。
私の気違い部落_a0028444_1945332.jpg